コロナ禍、多くの人が必要以上のストレスを感じながら日々を過ごしていると思います。
私も、2月末から在宅勤務が始まり、年内は在宅勤務です。最初は良かったのですが、長期間の在宅勤務は流石に疲れますね。
以前、「ストレス」について書きましたが、ストレスが人に与える影響について最近よく考えるようになりました。
アメリカ、ヨーロッパと日本の3つの地域にまだがる会議は、いつも、日本時間の夜中。アメリカと日本の2つの地域の会議であっても、日本の夜か早朝(だいたい6時か7時)。
常に結果を求められる会社にいると、どの職位であってもその人の力を最大限に出し続けないと評価はされません。そこにコロナが加わり、「対人関係が悪くなった」「健康診断で精密検査って結果がでた」「寝れなくなった」。
私の周りには、そんな人々がいます。
コロナ太りが気になり、自宅でできる筋トレや、密をさけて屋外でランニングをする人など、スポーツをストレス発散に活用している人は少なくはありません。
しかし、どんなにトレーニングをしても、適切なストレス管理をしていなければ、あまり効果は期待できないかもしれません。
このことは、スポーツ愛好家だけではなく、アスリートも同様です。
適切なストレス管理がないトレーニングは効果が薄れると考えられる理由
仕事が忙しいと、つい追い込んだトレーニングをやりたくなるのは、私だけでしょうか?
そんな時、「年には勝てない!」とつい口にしてしまいつつ、意外とパフォーマンスは良かったりします。
ストレスが運動にどのような影響を与えるのか?ということについて整理した論文があります。(※)その論文によると、ストレスは運動に良い影響を与える場合もあれば悪い影響を与える場合もあり、運動をストレス発散に使えている人は、そのパフォーマンスも上がる場合があると示唆しています。
一方、トレーニングの効果はどうでしょうか?
一般的に、トレーニングについて考える時、トレーニングのボリューム、強度、頻度等、どれだけ筋肉に負荷を与えるか?ということにフォーカスします。
Foundation of Athlete Wellnessのオンライン講座を受けていただいた方は、既にご理解されているかと思いますが、適切なリカバリーなしでは、疲れを翌日に残してしまい、計画通りにトレーニングをすることができなくなる場合があります。
また、適切なリカバリーなしでトレーニングを継続すると、バーンアウトや怪我という結果になる可能性もあります。
同オンライン講座でご紹介していますが、現代社会において、仕事、睡眠、飲みすぎ、人間関係といったライフイベントのストレスや、自らストレスと感じる知覚ストレス(perception of stress)は、リカバリーに影響を与えます。
つまり、トレーニングで身体や代謝にかかるストレス以外のストレスがあると、そのストレスの回復にエネルギーを使い、本来トレーニングから受けた身体の各組織や代謝系にかかる負荷への回復に必要なエネルギーは少なくなり、身体や代謝系の回復は鈍ることになるのです。
このことについて科学的に検証した論文を探したところ、関係ありそうなものを2つ見つけました。(※※)
1つは、知覚ストレス評価(PSS)とUSQ(Undergraduate Stress Questionnaire)というアンケートを用いて、ストレスを感じている被験者とストレスを感じていない被験者を対象に、大学の筋力トレーニングに参加してもらい、ストレスと回復との関係を検証するというものです。
PSSは本人がどの程度のストレスを感じているかを測るもので、USQはストレスの原因となるような出来事がどの程度起きているかを確認するものです。
この論文の結論は、「運動からの回復の進み具合とストレスに関するアンケート結果には強い相関関係がある」でした。もう1つの論文では、早い段階の運動回復とストレスについて検証したものですが、この2つの論文から、ライフイベントのストレスや知覚ストレスは、筋肉の回復に影響があることが示唆されました。
したがって、筋肉の回復時間には、個人差はあるものの、ストレスが一定の影響を与えると考えられます。
頑張りすぎる人、多忙な人は要注意!体からのサインを見逃していませんか?
ストレスは、トレーニング効果に影響を与えるだけではなく、体への影響も様々です。
例えば、不眠症、体重増加、体内炎症、認知の問題、免疫力を下げる、など。しかし、頑張りすぎる人や多忙な人は、「疲れ」という体からのサインも、「多少の無理がきく!」と自慢したりして、隠してしまいます。
・大きな課題を成し遂げた後の達成感や充実感がたまらなく好きな人
・自分へのご褒美があればつらいことでも乗り越えられる人
・責任感の強い人
・人から褒められると張り切って頑張る人
このような人は、体からのサインを見逃してしまう可能性があり、体が疲れているのに「もっと!」と追い込んでしまいます。
その結果、怪我をしてしまったり、体調を崩したりします。スポーツ依存症の人もこのような傾向にあるようです。
スポーツはストレス発散になる場合もありますが、それ自体の適切なストレス管理が欠かせません。
そして、アスリートやスポーツ愛好家にとっても、トレーニング効果を最大限に活かす為に、適切なストレス管理は欠かせません。
それには、自分がどの程度のストレスを感じているのか?PSS評価を行ってみて確認してみると良いかもしれません。
そして、ストレスの原因や体からのサインの意味を、ヘルスコーチやストレス管理の専門家に相談してみるのもおすすめです。
参考文献
※
Stults-Kolehmainen, M.A., Sinha, R. “The Effects of Stress on Physical Activity and Exercise”. Sports Med 44, 81–121 (2014)
※※
M A Stults-Kolehmaien & J B Bartholomew “Psychological stress impairs short-term muscular recovery from resistance exercise” Med Sci Sports Exercise Nov 44: 2220-7 (2012)
M A Stults-Kolehmaien et al “Chronic psychological stress impairs recovery of muscular function and somatic sensation over a 96-hours period” J Strength Cond Res Jul;28(7):2007-17 (2014)
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